「丹波山の芋」の集荷場から

丹波地方で江戸時代中期ころから栽培されていたといわれている「山の芋」。
ヤマノイモの産地は全国にいくつかありますが、丹波市の気候風土と豊かな土壌で育まれた「丹波山の芋」は、「粘りがつよく形が良い」という品質の高さが特長です。
11月は山の芋の収穫まっただ中。集荷を行うJAひかみ柏原営農経済センターを訪ねました。

11月下旬の朝8時過ぎ。
集荷場は、収穫した山の芋を持ち込む生産者の軽トラックで列ができるほどの賑わいでした。そして、集荷された山の芋を手際よく選別し、箱詰め・袋詰めに携わる丹波山の芋生産組合のみなさん。箱詰めにされた「丹波山の芋」は、この時期の丹波の旬の高級食材として、お歳暮などの贈答品になるそうです。

山の芋集荷施設

山の芋集荷施設 JAひかみ柏原営農経済センター

丹波市で生産されている山の芋は約70トン。全国にあるヤマノイモの産地としては比較的生産量は少ないですが、品質に優れた高級食材の産地として知られています。

上質の山の芋を育むのは丹波特有の土壌だと教えてくれたのは、JAひかみ柏原営農経済センターの田中栄作さん。
カギとなるのは水はけが良く適度に粘りのある丹波特有の土壌です。山の芋は、粘土質が粘りの強さを育み、砂地で形の良い芋が育つとのこと。粘土質だけでは粘りは強いけれど形がいびつになり、砂地では形は良いけれど粘りが薄い…。その両方を満たす好条件の土壌で丹波山の芋は栽培されています。

さらに、生産者からは、「昔は、霧芋って呼んどったんや」というお話も伺いました。丹波地方は秋から冬にかけて深い朝霧がたちこめます。その中でも特に霧が深い柏原地域は昔からの山の芋の生産地で、霧の出るころに収穫する芋だから「霧芋」と呼んでいたのだとか。名前の由来が丹波市の気候風土から来ているということは、この土地に古くから親しまれてきた食材だということを感じさせてくれます。

山の芋生産者

山の芋生産者

すりおろした山の芋は、「お餅のようによく伸びる」と表現したほうが良いほどのねっとり感。お箸で持ち上げると、このとおり。粘りの強さに驚きます。

すりおろした山の芋は、「お餅のようによく伸びる」

すりおろした山の芋

一般的に粘りの強い芋といえば長芋を思い浮かべる方も多いと思いますが、丹波市では、なんといっても丹波山の芋です。ですが、希少なうえ高級食材とあって目にする機会が少なく、一般的には知られていないのかもしれません。
というのも、山の芋は、一つの種子から一つの芋しか実らないため、収穫量自体が少なく、また、収穫は手掘りで行うので手作業での労力がかかります。現在、丹波では76件あまりの農家が山の芋を生産されていますが、大規模生産というわけではなく、手の届く範囲の生産を丁寧にされていることもあって、希少な存在なのです。

丹波山の芋生産組合 組合長 平瀬明一さんの山の芋畑にて

丹波山の芋生産組合 組合長 平瀬明一さんの山の芋畑にて


平瀬明一さんの山の芋畑にて、堀りたての山の芋

平瀬明一さんの山の芋畑にて、堀りたての山の芋


さて、この粘りの強い山の芋。丹波ではどんな食べ方がおすすめか生産者のみなさんに伺ったところ、まずはやっぱり「とろろ飯」。
山の芋をおろし金ですりおろしてからもう一度すり鉢ですると、いっそう粘りが増すのだとか。2度すりでねっとり仕上がった山の芋をダシ汁でのばし、アツアツのご飯にかけて、ずずずっと掻き込む。もっちりとした弾力のとろろ飯は深い味わいの贅沢な逸品。

また、どのお家でも定番の使い方は、お好み焼きに入れること。ふわふわもっちりのお好み焼きは丹波山の芋ならではのおいしさです。
他にも、すりおろした山の芋を海苔でくるんで揚げる「磯部揚げ」や、お味噌汁に入れてお団子のようなもちもち感を味わう食べ方など、粘りやもっちり感を楽しめる料理がたくさんあります。

今が旬の山の芋。ぜひ一度お召し上がりください。